「年金って、自分が働いて納めた分だけが戻ってくるもの」と思っていませんか?実は、一定の条件を満たすと、自分の年金にプラスアルファで上乗せされるお金があるんです。それが「加給年金」です。
しかし、この加給年金には「知らずに手続きを忘れると損をする」「良かれと思って年金を遅らせるともらえなくなる」といった、ちょっとした落とし穴もあります。
今回は、加給年金の基本から、最近話題の「繰下げ受給」との相性まで、わかりやすくお話しします。
加給年金とは?年金の家族手当と覚えよう
加給年金を一言でいうと、厚生年金版の家族手当です。現役時代、会社から配偶者手当や扶養手当をもらっていた方は多いはず。加給年金はまさにその年金バージョンです。
ここが重要! 加給年金は、本人ではなく「家族(配偶者や子供)」のために加算される特別な上乗せ年金です。
どんな時にもらえるの?(もらうための3つの絶対条件)
加給年金をもらうためには、以下の3つのハードルをクリアしている必要があります。
① 本人の条件:厚生年金に20年以上入っていること
まずはご自身が、会社員や公務員として厚生年金に合計20年以上(240ヶ月以上)加入していたことが条件です。自営業一筋で国民年金のみだった方は、残念ながら対象外となります。
② 家族の条件:65歳未満の配偶者がいること
本人が65歳になった時点で、生計を維持している65歳未満の配偶者(妻や夫)がいることが条件です。お子さんの場合は、18歳到達年度の末日まで(高校卒業まで)が対象です。
③ 収入の条件:家族の年収が850万円未満であること
養われている配偶者や子供の年収が、将来にわたって850万円未満である必要があります。
結局いくらもらえるの?(驚きの加算額)

微々たるものなら、面倒な手続きはしたくないと思うかもしれませんが、金額を見て驚かないでください。2025年現在の基準では、配偶者がいる場合の加算額は、年間で415,900円(月額約35,000円)にもなります。
もし、ご主人が65歳で、奥様が60歳(5歳下)だった場合。奥様が65歳になるまでの5年間トータルで約200万円以上のお金が上乗せされる計算です。
重要!繰下げ受給をすると加給年金は消滅する?
最近は年金を遅らせて受け取ると受取額が増える繰下げ受給が推奨されています。しかし、ここに最大の落とし穴があります。
老齢厚生年金を繰り下げている期間、加給年金は1円も支給されません。
加給年金は、あくまで本人が厚生年金を受け取っているときにおまけとして付いてくるものです。繰下げを終えて70歳から年金をもらい始めたとしても、その時に奥様がすでに65歳になっていれば、本来もらえるはずだった加給年金は完全に消えてしまいます。
年の差何年なら「繰下げ」より「加給年金」がお得?
ここが皆さまが一番知りたいポイントでしょう。「加給年金を捨ててでも年金を増やすべきか、それとも加給年金をしっかりもらうべきか」。
判断の鍵は、ズバリ「夫婦の年の差」にあります。
年の差が「7歳以上」なら:65歳から即もらうのが正解!
奥様が7歳以上年下の場合、加給年金の総額は 約40万円 × 7年 = 約280万円 になります。 この280万円を捨ててまで年金を繰り下げた場合、増えた年金額で「捨てた280万円」を回収するには、本人が90歳以上長生きしないと損をする計算になります。 多くのプロ(社労士やFP)も、年の差が7歳以上あるなら、繰り下げずに65歳から加給年金をもらうことを勧めます。
年の差が「3歳以内」なら:繰下げを検討してOK
奥様との年齢が近い場合、加給年金をもらえる期間は3年(約120万円)以下です。 この程度であれば、70歳まで年金を繰り下げて「一生涯の受取額を42%増やす」方が、80代半ば以降の長生きリスクに備える上では有利になる可能性が高まります。
年の差が「4歳〜6歳」なら:迷いどころ
このゾーンが一番悩ましいですが、一つの基準は「ご自身の健康状態」です。「自分は家系的に長生きしそうだ」と思うなら繰下げ、「今すぐ現金が欲しい、旅行や趣味に使いたい」と思うなら65歳受給を選びましょう。
加給年金と繰下げの「いいとこ取り」をする裏ワザ
実は、「加給年金をもらう」ことと「年金を増やす」ことを両立する方法が一つだけあります。
それは、「厚生年金は65歳から受給し、国民年金(基礎年金)だけを繰り下げる」という方法です。
- 老齢厚生年金: 65歳から受け取る → 加給年金が全額もらえる!
- 老齢基礎年金: 70歳まで繰り下げる → 自分の基礎年金が42%アップ!
年金は「一括で遅らせる」必要はありません。このように切り分けることで、奥様のための家族手当をしっかり確保しつつ、自分の年金を強化することができるのです。
今後、加給年金は減らされる?廃止される?
「こんなにいい制度、ずっと続くの?」と不安になる方もいるでしょう。
今のところ、「加給年金がすぐに廃止される」という決定はありません。 しかし、年金制度全体としては、以下のような流れにあります。
- 共働き世帯の増加: 奥様自身も厚生年金に20年以上入っている場合、加給年金は停止されます。共働きが増えている現代、自然と対象者は減っています。
- 振替加算の縮小: 奥様が65歳になった後に引き継がれる「振替加算」という制度は、奥様の生年月日が若くなるほど金額が減り、将来的にはなくなることが決まっています。
加給年金自体も、将来的に「所得制限がもっと厳しくなる」などのマイナーチェンジが行われる可能性は十分にあります。今後の制度改正等をチェックする必要がありますね。
失敗しないための申請チェックリスト
加給年金は、「自動的にはもらえません」。自分で申請しないと、国は1円もくれません。
- 戸籍謄本を用意する: 夫婦関係を証明するために必要です。
- 世帯全員の住民票: 一緒に暮らしている(生計を維持している)証明です。
- 配偶者の所得証明: 年収850万円未満であることを証明します。
- 年金事務所へGO: 65歳になる誕生月の前あたりに届く「裁定請求書」に、加給年金の対象者がいることを忘れずに記入しましょう。
まとめ:あなたの「最適解」を見つけよう

加給年金は、知っているか知らないかで200万円、300万円という単位で手取りが変わる非常に重要な制度です。
- 厚生年金20年以上の人は、まず「加給年金」の対象か確認!
- 奥様が年下なら、安易な「繰下げ」は禁物!
- 迷ったら「厚生年金だけもらい、基礎年金を遅らせる」分割作戦を!
老後の資金計画に「正解」はありませんが、「損をしない選択」はあります。この記事が、皆さまの豊かなセカンドライフの一助となれば幸いです。
次にやっていただきたいこと
まずはねんきん定期便のハガキを広げて、自分の厚生年金の加入月数が240ヶ月を超えているか確認してみてください!
参考記事:難しい用語はもう怖くない!【ねんきん定期便】を確認して老後のお金と保険をスッキリ整理する方法



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