定年後のお金、どうする?毎月分配型投資信託の賢い活用法

資産の取崩し方

毎月分配型投資信託」と聞いて、どんなイメージをお持ちでしょうか?

「銀行の窓口で勧められて、退職金で買ったけど大丈夫かな?」 「資産形成には向かないって聞いたから、ちょっと不安…」

そう思っている方もいらっしゃるかもしれません。毎月分配型投資信託は、よく「資産を減らしてしまう」と批判されがちです。しかし、その仕組みそのものが悪いわけではありません。

このブログでは、毎月分配型投資信託がどんな商品なのか、そしてどんな人に向いているのかを、シニア世代の皆さまにも分かりやすく解説します。

そもそも「投資信託」とは?

「毎月分配型」の前に、まずは「投資信託」について簡単に説明します。

投資信託とは、簡単に言うと「お金を運用のプロに任せる」仕組みです。

たくさんの人から少しずつお金を集め、それを「ファンド」というひとつの大きな資金にまとめます。そして、運用のプロ(ファンドマネージャー)が、その資金を株や債券などに投資して増やします。

その結果生まれた利益は、お金を出してくれた皆さんに分けられます。

運用のプロに任せるので、私たちは毎日、株価や為替をチェックする必要はありません。その代わり、運用を任せるための手数料(信託報酬)が、最終的な利益から引かれます。

「毎月分配型投資信託」ってどんなもの?

投資信託の中でも、毎月決まった日に、運用で得た利益などを「分配金」として受け取れるのが、毎月分配型投資信託です。

この商品は、「投資を続けながら、毎月こまめに運用のお金を受け取りたい」という方にぴったりです。

例えば、「年金の足しにしたい」「毎月の生活費に少しでもプラスしたい」といったお考えをお持ちの方には、とても便利な仕組みです。

ただし、注意点がひとつ。

分配金は、運用がうまくいかなかった月でも支払われることがあります。利益が出ていないのに分配金を支払う場合は、元々預けたお金(元本)を切り崩して支払うことになります。

これを「タコ足配当」と呼んだりしますが、タコが自分の足を食べてしまうように、お金がどんどん減っていく状態を指します。

この仕組みを理解することが、毎月分配型投資信託を上手に利用する上でとても大切です。

参考:日本証券業協会 「毎月分配型の投資信託」とは?https://www.jsda.or.jp/about/hatten/risk/bunpai/index.html

なぜ毎月分配型は人気なの?

実は、日本経済新聞の記事(2024年10月)によると、シニア世代を中心に、毎月分配型投資信託がとても人気だそうです。

なぜなら、公的年金に加えて、毎月安定した収入を得ることで、日々の生活にゆとりが生まれるからです。

これは、定年退職後に資産を大きく増やすことよりも、運用しながら少しずつ取り崩して、生活に役立てたいと考える方が増えていることを示しています。

毎月分配型投信に4600億円流入超過!

日本経済新聞(2024年10月18日掲載)に、2024年度上半期(4~9月)は4,662億円の流入超だったとの記事があった。

その記事には、「24年1月に始まった新NISAでは複利効果が得にくい毎月分配型投信が一律で対象から外れた。制度開始前後には、毎月分配型投信を解約して対象投信に乗り換える。しかし、24年度上半期の純流入額は、23年度同期やその前と並ぶ規模だ。買い手の中心は資産の取り崩し期を迎えた高齢者とみられる。」とあった。

つまり、定年退職後に公的年金をもらいながらかつ、資産を取り崩しながらシニア生活を送る退職世代には、まさに公的年金の不足分を埋めてくれる、まさに丁度よい金融商品である。

毎月分配型投資信託の「良い点」と「残念な点」

良い点(メリット)

毎月、収入を受け取れる

年金生活の足しになる、お小遣いや生活費に充てられるなど、毎月の計画が立てやすくなります。

投資している実感がわく

目に見える形で定期的に収入があると、「投資をしていてよかった」という満足感が得られます。

預貯金より金利が良い場合が多い

銀行にただ預けておくよりも、お金を増やしながら定期的な収入を得られる可能性があります。

残念な点(デメリット)

「タコ足配当」で元本が減る可能性がある

運用がうまくいっていない時でも、無理に分配金を出すことがあるため、最初に預けたお金がどんどん減ってしまう可能性があります。

お金が増えにくい

投資で得た利益を、再び投資に回して雪だるま式にお金を増やす「複利」という仕組みがあります。しかし、毎月分配金を受け取ってしまうと、再投資できるお金が減り、複利の効果が働きにくくなります。

手数料が高い傾向がある

複雑な運用をしている商品が多く、買う時の手数料などが高く設定されている場合があります。

毎月分配型投資信託を見分ける3つのポイント

では、数ある毎月分配型投資信託の中から、良い商品を見分けるにはどうすればよいのでしょうか。

一番大切なのは、「ファンドがどれくらいの収入を得ているか」と「分配金がその収入でまかなえているか」をチェックすることです。

具体的な計算方法をご紹介します。

マンスリーレポートを見る

投資信託のホームページには、「マンスリーレポート(月次報告書)」が公開されています。これを見ると、そのファンドがどれくらいの収入(「直接利回り」など)を上げているかが分かります。

ファンドの収入を計算する

マンスリーレポートに載っている「直接利回り」を使って、ファンドが1ヵ月にどれくらいの収入を得ているかを計算してみましょう。

ファンドの収入 = 基準価格 × 直接利回り ÷ 12

※「基準価格」はその日の投資信託の値段、「直接利回り」は年間の収入率のことです。

分配金が収入でまかなえているかを確認する

計算した「ファンドの収入」を、実際に受け取った「今月の分配金」で割ってみましょう。

まかなえている割合 = ファンドの収入 ÷ 今月の分配金

  • もし、この割合が「100%」を超えていたら
    • ファンドの収入だけで、分配金を十分に支払えている状態です。元本を減らさずに分配金を出している、健全なファンドと言えます。
  • もし、「100%」を下回っていたら
    • 収入だけでは分配金をまかなえていない状態です。元本を切り崩して分配金を出している可能性が高いです。

この計算を数ヶ月分試してみると、そのファンドが健全かどうかを見極めることができます。

MCOニューワールドインカムファンド<メキシコペソコース>(毎月分配型)の場合

 基準価格7,912円(*1) × 直接利回り(平均直利)7.5%(*2)÷12=49.45円

  *1:2023.08.18現在  *2:2023年6月末マンスリーレポートより

2023.7月の分配金は70円。つまり、49.45円÷70円=70.64% のため約30%程度元本取崩している状況である。

続いて、毎月分配型投資信託分配金ランキング2位(MINKABUランキングより)である、

三菱UFJ米国バンクローンファンド通貨選択シリーズ<メキシコペソコース>(毎月分配型)(スマートスター)の場合

 基準価格7,881円(*1) × 直接利回り(平均直利)9.2%(*2)÷12=60.42円        

   *1:2023.08.18現在  *2:2023年6月末マンスリーレポートより

2023年7月の分配金は50円。つまり、60.42円÷50円=120.8% のため資産を取り崩していない状況である。

ただし、ファンドの収入は毎月一定の金額というわけではありません。たまたま収入が少なかったり、逆に多かったという月もありますので、そのファンドが健全かどうかを確認するためには、数か月分のデータをとってみましょう


毎月分配型以外でも、毎月お金を受け取れる方法

「毎月分配型投資信託は少し心配」という方でも、毎月お金を受け取る方法があります。

それが「定期売却サービス」です。

これは、毎月分配型ではない投資信託を、必要な分だけ少しずつ売っていくサービスです。多くの証券会社で利用できます。

3つのやり方があるので、自分に合う方法を選んでみましょう。

金額を指定して売却する

「毎月5万円ずつ」というように、受け取る金額を自分で決めて売却する方法です。

  • 良い点
    • 毎月の生活費として、安定した金額を受け取れるので、収支の管理がしやすいです。
  • 注意点
    • 相場が下がっている時にたくさん売却することになり、結果的に資産が早く減ってしまう可能性があります。

割合を指定して売却する

「持っている資産の1%ずつ」のように、決まった割合で売却する方法です。

  • 良い点
    • 相場が下がっている時には売るお金も少なくなるので、資産が長持ちする可能性があります。
  • 注意点
    • 毎月受け取る金額が変動します。また、持っているお金が減ると、受け取る金額もだんだん少なくなります。

期間を指定して売却する

「80歳になるまでに使い切りたい」のように、期間を決めて売却する方法です。

  • 良い点
    • 「いつまでに使い切る」という目標が決まっている方におすすめです。
  • 注意点
    • 受け取る金額が変動します。金額を安定させたい場合は、値動きの少ない投資信託を選ぶとよいでしょう。

これらの方法は、後から変更することも可能です。

例えば、リタイアしたばかりの頃は「割合指定」で無理なく取り崩し、70歳を過ぎたら「期間指定」に変更して、80歳までに使い切る、といった柔軟な使い方もできます。

結局、自分に合った投資信託って?

毎月分配型投資信託」は、決して悪い商品ではありません。

すでにしっかり資産を築き、これから大きなリスクを負う必要はないと考えている方にとっては、毎月の生活を豊かにする良い商品になりえます。

一方、「これからお金を増やしたい」と考えている方には、毎月分配金を受け取らずに再投資に回せるような投資信託の方が、お金を大きく育てやすいでしょう。

大切なのは、「自分はいつまでに、いくら増やしたいのか」をはっきりさせることです。

その目的と目標によって、どの投資信託が自分に合っているかが決まってきます。


いかがでしたでしょうか? この記事が、皆さまのお金との向き合い方を見直すきっかけになれば幸いです。もし気になる点や、さらに詳しく知りたいことがあれば、お気軽にご質問ください。

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