「病気やケガに備えて医療保険に入りたいけれど、保険料を払い続けるのはなんだかもったいないな…」
「医療保険に入っているけれど、これまで一度も入院や手術をしたことがなく、給付金をもらったことがない」
もしあなたがそんなふうに感じているなら、「保険料が戻ってくるタイプの医療保険」が気になっているかもしれません。
この保険は「貯蓄型医療保険」とも呼ばれ、払い込んだ保険料が、決まった条件を満たすと手元に戻ってくる仕組みです。
ここでは、「掛け捨て型」と「貯蓄型」という2つの医療保険を比べながら、後悔しないための選び方をわかりやすくお伝えします。
医療保険の2つのタイプ:あなたはどっちを選ぶ?
医療保険は大きく分けて2つのタイプがあります。あなたの考え方に合うのはどちらでしょうか?
1. 貯蓄型医療保険(保険料が戻ってくるタイプ)
この保険は、病気やケガに備える「保障」と、お金を貯める「貯蓄」が一緒になったような商品です。
健康なまま過ごせば、支払った保険料が「お祝い金」や「健康還付金」として手元に戻ってくる仕組みになっています。
1. 「お祝い金」がもらえるタイプ
このタイプは、一定の期間(たとえば5年や10年)ごとに、まとまったお金が「お祝い金」として受け取れる仕組みです。
健康を保って、保険会社が定める条件(一定期間、給付金を受け取らなかったなど)を満たすと、お金がもらえます。医療保障を受けながら、まるで「貯金」をしているような感覚ですね。
2. 「使わなかった分」が戻るタイプ
このタイプは、契約した年齢まで健康で過ごすと、それまでに支払った保険料のほとんどがまとめて戻ってくる仕組みです。
万が一、途中で病気やケガで給付金を受け取った場合は、その金額を差し引いた分が返ってきます。
これまで入院や手術の経験がなく、「保険料を無駄にしたくない」と考えている方には、魅力的に見えるかもしれません。
<メリット>
- 健康でもお金がもらえる安心感: 病気やケガがなくても、払ったお金が戻ってくるので「無駄にした」という気持ちになりにくいです。
- 計画的に貯蓄ができる: 毎月決まった日に保険料が自動的に引き落とされるため、面倒な手続きなしで、半ば強制的に貯金ができます。また、途中で解約するとお金が減ってしまう(元本割れ)ことが多いため、簡単にお金を引き出せないという点も、貯蓄を続ける助けになります。
3.もう一つのタイプ「解約返戻金」
保険を途中でやめた場合に、それまでに払った保険料の一部が「解約返戻金」として戻ってくるタイプもあります。長く続けるほど戻るお金は増えますが、入ってすぐにやめると、ほとんど戻ってこないことが多いので注意が必要です。
保険料が戻ってくる医療保険のデメリット
良いことばかりに見えますが、この保険には注意すべき点もいくつかあります。
必ずお金が戻ってくるわけではない
「保険料が戻ってくる」のが最大の魅力ですが、そのためには「一定期間、給付金を受け取っていないこと」など、いくつかの条件を満たす必要があります。病気やケガはいつ起こるかわからないので、必要なときにお金が受け取れない可能性もあります。
将来もらえるお金の価値が下がるかも
「支払った保険料が全額戻ってくる」と聞くと、とてもお得に感じますよね。
しかし、もし将来、物価が上がっていた(インフレ)としたら、どうなるでしょうか?
たとえば、今100万円で買えたものが、10年後には120万円を出さないと買えなくなってしまうかもしれません。
保険でもらう100万円は変わりませんが、実際にお金の価値は下がってしまっているのです。せっかく戻ってきても、そのお金で買えるものが少なくなってしまうリスクがあることを覚えておきましょう。
途中でやめると損をする可能性が高い
この保険は、途中で解約すると、それまでに支払った保険料の合計額を下回ってしまう(元本割れ)ことがほとんどです。
保険会社は、みなさんから受け取った保険料の中から、会社の運営費や給付金を支払うお金を差し引いています。そのため、契約してすぐにやめてしまうと、十分にお金が積み立てられていないため、損をしてしまうのです。この保険は、基本的に長く続けることを前提に考える必要があります。
掛け捨てタイプより保険料が高い
「戻ってくるお金」や「貯蓄」の分も含まれているため、この保険は、同じ保障内容の掛け捨てタイプの医療保険と比べて、保険料が割高に設定されています。
後から「掛け捨て」に変更できない
一度この保険に入ると、後から「保険料の安い掛け捨てタイプにしたい」と思っても、途中で変更することはできません。変更したい場合は、一度保険を解約して入り直す必要があります。
2. 掛け捨て型医療保険(保険料が戻らないタイプ)
この保険は、文字通り「保障」に特化したシンプルな商品です。
病気やケガをしたときだけ給付金を受け取ることができ、特に何もなければ保険料は戻ってきません。
<メリット>
- 保険料が安い: 貯蓄の機能がないため、月々の保険料を安く抑えられます。
- 見直しがしやすい: 貯蓄機能がない分、保障内容が分かりやすく、体の状態やライフスタイルに合わせて見直しがしやすいです。
<デメリット>
- 保険料が戻らない: 病気やケガがなければ、支払った保険料は戻ってこないため、人によっては「もったいない」と感じるかもしれません。
後悔しないための医療保険選びのポイント

ポイント1:医療保険の本来の目的を考える
保険は、「めったに起こらないけれど、もし起こったら家計への負担が大きい」リスクに備えるためのものです。
病気やケガをしたときに、治療費の心配をせずに治療に専念できることを一番に考えることが大切です。
ポイント2:お金を増やす手段と切り離して考える
お金を増やすこと(資産運用)と、病気に備えること(保険)は、別々に考えるのが鉄則です。
貯蓄型医療保険は、保障と貯蓄が一緒になっていますが、手数料などがかかるため、効率よくお金が増やせるわけではありません。
将来に向けた資産づくりを考える場合は、新NISAなどの「資産を増やす」ことに特化した金融商品で運用することをおすすめします。
ポイント3:毎月の家計に無理がないかを確認する
貯蓄型医療保険は保険料が高めです。将来お金が戻ってくるからといって、毎月の支払いが家計の負担になってしまうと、長く続けるのが難しくなります。
無理なく続けられる金額かどうか、必ず確認しましょう。
デメリットを十分理解した上で、加入を検討しましょう。
医療保険と資産運用は分けて考えるのがおすすめ

ここまでの内容をまとめると、この保険は「医療保障」と「貯蓄」を一つにまとめた商品です。
たしかに、貯蓄が苦手な方や、家計に余裕がある方には向いているかもしれません。しかし、保険を選ぶ本来の目的は、病気やケガで大きな出費があったときに、お金の心配をせずに治療に専念できるよう、「リスクに備えること」です。
保険料が安く、保障内容を柔軟に変えられる「掛け捨てタイプ」の医療保険で、いざというときの備えをしっかりしておくのが賢明です。
「戻ってこないのはもったいない」と感じるかもしれませんが、その分、保険料を安く抑えられます。そして、その差額を他の方法(たとえば新NISAなどの資産運用)で増やすこともできます。
「資産を増やす」ことと「病気に備える」ことは、別々に考えるのが鉄板です。
どちらの医療保険が自分に合っているか一人で判断するのが不安な場合は、保険の専門家であるファイナンシャルプランナー(FP)に相談してみるのも良いでしょう。
あなたのライフスタイルや考え方に合った、最良の選択を見つけてください。
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