親が認知症になる前に!成年後見制度と家族信託、どっちが安心?費用と手続きを徹底比較

資産運用

「最近、親の物忘れが少し増えた気がする……」 「もし認知症になったら、銀行の手続きや実家の管理はどうなるんだろう?」

そんな不安を抱えている皆さま、そしてそのご家族の方へ。 親御さんが元気なうちは意識しにくいことですが、実は「判断能力が低下した」とみなされると、銀行口座は凍結され、不動産の売買もできなくなるという厳しい現実があります。

こうした事態に備えるための代表的な仕組みが「成年後見制度

そして、最近注目を集めているのが、より自由度の高い「家族信託(かぞくしんたく)」です。

今回は、それぞれの違いや活用事例、そして気になる「費用」と「手続き」について、分かりやすく解説します。

成年後見制度とは?―親の権利を守る公的なサポーター

成年後見制度を一言でいうと、「判断能力が不十分になった人の代わりに、お金の管理や契約を助けてくれるサポーターをつける制度」のことです。

今の日本では、本人の意志が確認できない状態で家族が勝手に預金をおろしたり、家を売ったりすることは法律上非常に難しくなっています。

最高裁判所の最新の統計(2024年度データ)では、累計の利用者数は24万人を超えました。

銀行の本人確認が厳格化された今、この制度は「もしも」の時のスタンダードな選択肢となっています。

「法定後見」と「任意後見(家族後見)」の違い

後見制度には、大きく分けて2つの入り口があります。

比較項目法定後見(事後の対策)任意後見(事前の対策)
いつ手続き?認知症になった後元気なうち(今すぐ)
誰が決める?家庭裁判所が決める自分で指名できる
誰がなる?専門家(弁護士等)が8割子供や親族がなれる

【注意点】 親が認知症になった後に慌てて申し立てる「法定後見」では、裁判所が後見人を選びます。親族が選ばれる確率は約2割程度。残りの8割は知らない専門家が選ばれ、毎月数万円の報酬を親の財産から払い続けることになります。

意外と知らない!後見人に「できること・できないこと」

「後見人になってもらえば、親の身の回りのことは全部任せられる」と思われがちですが、実は役割がハッキリ分かれています。

後見人が「直接しないこと」(事実行為)

以下のことは、後見人の仕事には含まれません。

  • 家事: 部屋の掃除、洗濯、料理を作る
  • 買い物: ティッシュや食料品などの日用品を買いに行く
  • 直接的な介護: 入浴や排泄の介助、病院への送迎や付き添い

後見人が「すること」(法律行為・事務)

後見人は、いわば「マネージャー(管理職)」のような立ち位置です。

  • 契約: ヘルパーさんを呼ぶための「介護契約」や、施設の「入所契約」を結ぶ
  • 支払い: 介護費用や公共料金、税金の支払いを行う
  • 見守り: ケアマネジャーと連絡を取り合い、適切なサービスが受けられているかチェックする

【例】部屋が汚れていたら? 後見人が自らほうきを持って掃除するのではなく、親御さんの通帳から費用を出し、「ハウスクリーニング業者やヘルパーさんを手配する契約を結ぶ」のが後見人の仕事です。

親族が後見人になる場合はどうなる?

もし、あなたが親御さんの後見人になった場合、「私は娘だから、掃除も買い物もしているわよ」という状況になりますよね。 これは、「後見人としての事務」と、「家族としての身の回りのお世話」の2つの役割を、一人の人間が同時にこなしている状態です。

もし将来、ご自身が忙しくなったり体力が落ちたりしたときは、「後見人の権限」を使って、外部の介護サービスをどんどん活用していいのです。それが後見制度の本来の目的(本人が自分のお金で、自分らしく暮らすための仕組み)だからです。

注目される「家族信託」―自由度の高い家族の管理

最近、「後見制度よりも自由度が高い」と話題なのが家族信託です。

家族信託とは? 「元気なうちに、特定の財産(実家や預金)の管理権だけを、信頼できる家族にバトンタッチしておく契約」です。

後見制度が「本人の全財産を守る(減らさない)」ことが目的なのに対し、家族信託は「家族の意向を柔軟に反映できる」のが最大の特徴です。例えば、「家を売って孫の学費にしたい」といった希望も、契約に書いておけば実現可能です。

具体的な活用事例:わが家の場合はどうなる?

それぞれの制度を使うと、生活がどう変わるのか見てみましょう。

事例①:実家を売って「介護施設」に入りたい

  • 成年後見の場合: 認知症になってから家を売るには、裁判所の許可が必要です。「本人の生活基盤を奪う」とみなされ、許可が下りないケースもあります。
  • 家族信託の場合: 元気なうちに「実家の売却権」を息子に託しておけば、父が認知症になった後でも、息子の印鑑一つでタイミングよく売却し、入居費用を作れます。

事例②:孫への「お祝い金」を続けたい

  • 成年後見の場合: 財産を減らさないことが最優先なので、孫へのプレゼントや寄付は原則として認められなくなります。
  • 家族信託の場合: 「私が認知症になっても、毎年10万円は孫に渡す」と契約に書いておけば、本人の楽しみをそのまま継続できます。

気になる「お金」の話―初期費用と月々のコスト

それぞれの制度にかかる費用の目安をまとめました。

費用項目法定後見任意後見家族信託
初期費用約2万〜20万円約10万〜20万円約30万〜100万円
月々の報酬約2万〜6万円約1万〜3万円原則0円
特徴始めるのは安が、一生続く監督人への報酬が必要最初にまとまった額が必要

法定後見: 裁判所への実費は安いですが、専門家が選ばれると報酬が一生続きます(10年で数百万円になることも)。

家族信託: 専門家への設計料や登記費用で初期費用は高額になりがちですが、その後の月額報酬がかからないため、長期で見れば安くなることが多いです。

手続きはどう進める?―4つのステップ

「うちも備えておきたい」と思ったら、以下の順序で進めましょう。

ステップ1:親御さんの「意向」を聞く

まずは、親御さんとお茶を飲みながらリラックスして話しましょう。「お父さんの大事なお金を、将来悪い人に騙されないように守りたいんだ」というスタンスが大切です。

ステップ2:財産の棚卸し

どこの銀行に口座があるか、不動産の権利証はどこか。ざっくり把握するだけでOKです。

ステップ3:どの制度が合うか専門家に相談

  • 司法書士・弁護士: 家族信託や後見の設計・登記のプロ。
  • 公証役場: 契約を「公正証書」という公的な書類にする場所。 ※任意後見や家族信託は、元気なうちにしか契約できません。

ステップ4:契約・申立ての実行

内容が決まったら、公証役場での契約(任意後見・家族信託)や、家庭裁判所への申し立て(法定後見)を行います。

まとめ:後悔しないための「家族の対話」

「成年後見」も「家族信託」も、どちらが正しいというわけではありません。 大切なのは、「親御さんが最後まで自分らしく、安心して暮らせるかどうか」です。

認知症になってから慌てて手続きをすると、家族が一切関与できない「不自由な管理」になってしまうリスクがあります。

そうなる前に、親御さんと将来のことを少しだけ話してみてください。

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