【連載:50代からのお財布を守る!知らなきゃ大損する行動経済学 第2回】

行動経済学

第2回:「もったいない」が一番の損を招く?~サンクコスト(埋没費用):過去への執着を断ち切る勇気~

「せっかく高い手数料を払って入った保険だから、今やめるのはもったいない」 「これだけ長く持っていた株だから、せめてトントンになるまで待ちたい」

そんなふうに思って、なかなか次の一歩を踏み出せないことはありませんか? 日本人が大切にしてきた「もったいない」という美しい精神。しかし、資産運用の世界では、この感情があなたの首を絞める最大のワナになることがあります。

今回は、未来の資産を守るために知っておきたいサンクコスト(埋没費用)の正体についてお話しします。

1. 戻ってこない「サンクコスト」のワナ

行動経済学では、すでに支払ってしまい、どんなに努力しても戻ってこないお金や時間のことをサンクコスト(埋没費用)と呼びます。直訳すると「沈んでしまったコスト」です。

本来、合理的に考えるなら「これから先、損をしないためにはどうするか?」だけを考えればいいはずです。しかし、私たちの脳はせっかく注ぎ込んだもの(お金・時間・労力)を失いたくないという強いストレスを感じ、取り戻そうとしてさらに深みにはまってしまうのです。

2. なぜ「ダメだと分かっているのに」続けてしまうのか?

サンクコストとセットで語られる有名な言葉に、コンコルド効果があります。

かつてイギリスとフランスが共同開発した超音速旅客機「コンコルド」は、開発の途中で「このまま完成させても赤字になる」という予測がはっきりと出ていました。しかし、「これまでにつぎ込んだ巨額の資金と時間がもったいない」という理由だけで開発を継続し、結果としてさらに大きな赤字を出して破綻してしまったのです。

  • サンクコスト:すでに失ってしまった「戻らないコスト」そのもののこと。
  • コンコルド効果:そのコストを惜しむあまり、損だと分かっているのにやめられない心理現象のこと。

国の巨大プロジェクトですら陥ってしまうこのワナに、個人がハマってしまうのは当然のこと。だからこそ、自分の意志の弱さを責めるのではなく、「あ、今自分はコンコルド効果にハマっているな」と客観的に気づくことが大切なのです。

3. 「もったいない」が招く、具体的な2つの失敗事例

50代を過ぎてからの資産管理で、このワナは特に手強くなります。

① 「昔から続けている生命保険」のワナ

30代の頃に加入し、毎月2万円、これまでに数百万円の保険料を払ってきた特約付きの生命保険。「今解約すると損だ」と、内容の見直しをためらっていませんか? しかし、50代の今、本当にその保障は必要でしょうか。「これまで払った保険料」はサンクコストであり、解約しても戻ってきません。大切なのは、これから先、その高い保険料を払い続ける価値があるかです。不要な保障に払うお金を、新NISAなど「未来の自分年金」に回した方が、今のあなたにはプラスになります。

② 「塩漬けになった投資信託」のワナ

銀行で勧められ、100万円で購入した投資信託が80万円に下がっているとします。「100万円に戻るまで売りたくない」と持ち続けるのは典型的なワナです。 もし、その商品が手数料の高い古いタイプなら、待っている間にも毎日手数料が引かれています。失った20万円に目を奪われ、今の80万円をより良い商品に入れ替えるチャンスを逃していることこそが、本当の損なのです。

4. 「今、ゼロから出会ったら?」その後の具体的アクション

サンクコストの呪縛から逃れる魔法の質問、「もし今日、手元に現金がある状態でこの商品に出会ったら、自分はお金を払ってまでこれに入るだろうか?」。 もし答えが「NO」なら、感情が冷めないうちに以下の3つのステップで行動に移しましょう。

  1. 「解約」や「売却」をスケジュールに入れる 「いつかやろう」は、また脳のバグに捕まる原因です。まずは保険証券や証券口座のパスワードを確認し、手続きをする日を手帳に書き込みましょう。
  2. 浮いたお金の「行き先」を先に決める 古い保険を解約して浮いたお金、損切りして手元に残ったお金をどう使うか。「新NISAの積立額を増やす」「毎日のお散歩の後に楽しむ健康的な食事代にする」など、ポジティブな使い道を決めると、手放す痛みは和らぎます。
  3. 小さな「損」を「勉強代」として受け入れる 「今回は良い勉強になった、次から気をつけよう」と声に出して自分を許してあげてください。過去の清算は、未来への投資の第一歩です。

大切なのは今この瞬間から、自分のお財布と人生にとってプラスになる選択をすることです。

まとめ:過去の自分を許して、未来を歩く

過去の失敗を責める必要はありません。その時は、それがベストだと思って選んだはずですから。けれど、これからの人生後半戦は、重い荷物を背負ったままでは遠くまで歩けません。

もったいないを、これからの時間を大切にしようという言葉に置き換えて、今日からまた新しい一歩を踏み出してみませんか?お財布を身軽に整えること自体が、立派な資産形成です。

次回のテーマは…… 「損をするのが怖くて動けない?損失回避の心理と、変化を邪魔する現状維持バイアスの正体」です。お楽しみに!

今日から意識したいポイント

  1. 元を取ろうと過去を振り返るほど、未来の損が増えていく。
  2. 「NO」と決めたら、即座に解約・売却のスケジュールを立てる。
  3. 浮いたお金を「未来の安心(自分年金など)」に即座に割り当てる。

(第3回へ続く)

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