新NISAには無い!: iDeCoの最大のメリット「全額所得控除」とは

年金

2000年にスタートしたiDeCoは、2025年度の年金法案では、iDeCo(個人型確定拠出年金)の70歳まで延長や上限額の引き上げも改正も盛り込まれ、昨年の新NISA同様に注目されている。

iDeCoの大きなメリットの一つに、掛金が「全額所得控除」になるという点があります。

これは、支払った掛金の全額が所得税と住民税の計算対象となる所得(課税所得)から差し引かれるため、その分の税金が軽減されるという仕組みです。

急に、「全額所得控除」・「課税所得」って言われても、よくわからないと思われた方も多いと思われます。

ここでは、まず、「所得控除」や「課税所得」について詳しく説明し、その上で、iDeCoの最大のメリットであります「全額所得控除」について具体的に解説します。

「所得控除」ってなに

なぜ所得控除があるのか?

所得控除は、納税者一人ひとりの個人的な事情(病気になった、家族を扶養している、災害に遭ったなど)を考慮して、税負担を公平にするために設けられています。

例えば、同じ年収の人でも、配偶者やお子様など扶養家族が多い人や、医療費がたくさんかかった人など、それぞれの事情によって生活に必要な費用は異なります。そのような事情を税金に反映させるのが所得控除の目的です。

所得控除の種類

所得控除には、様々な種類があります。代表的なものをいくつかご紹介します。

  • 基礎控除:すべての納税者が受けられる控除です。所得金額に応じて控除額が決まります。
  • 社会保険料控除:支払った社会保険料(健康保険料、国民年金保険料など)の全額が控除の対象になります。iDeCoの掛金もこの「小規模企業共済等掛金控除」として全額控除の対象になります。
  • 生命保険料控除:生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料を支払った場合に受けられる控除です。
  • 医療費控除:年間で一定額以上の医療費を支払った場合に受けられる控除です。
  • 扶養控除:扶養している親族がいる場合に受けられる控除です。
  • 配偶者控除・配偶者特別控除:配偶者がいる場合に受けられる控除です。
  • 寄附金控除:国や地方公共団体、特定の公益法人などに寄附(ふるさと納税も含む)をした場合に受けられる控除です。

「所得控除」とは、税金を計算する際に、所得から一定の金額を差し引くことができる制度のことです。これにより、税金を計算するもとになる所得(課税所得)が減り、結果として納める税金の額が少なくなります。

所得控除を受けるための手続き

iDeCoの掛金の所得控除を受けるためには、以下のいずれかの手続きが必要です。

  • 会社員・公務員の場合:
    • 個人払込の場合: 年末調整で「給与所得者の保険料控除申告書」に必要事項を記入し、iDeCoの払込証明書を添付して勤務先に提出します。
    • 事業主払込(給与天引き)の場合: 勤務先が手続きを行うため、原則としてご自身での手続きは不要です。
  • 自営業者・フリーランスの場合: 確定申告で「小規模企業共済等掛金控除」として申告します。年末調整で申告し忘れた会社員・公務員も、確定申告で手続きできます。

このように、所得控除は税負担を軽減するための重要な制度ですので、ご自身に適用されるものがないかを確認し、適切に手続きを行うことが大切です。

では、具体的にシュミレーションしてみましょう

所得税や住民税は、以下の流れで計算されます。

  1. 収入金額:会社からもらう給料、事業で得た売上など。
  2. 所得金額:収入金額から、その収入を得るためにかかった「必要経費」を差し引いた金額。(例:会社員の場合は「給与所得控除」という形で経費が認められています。)
  3. 課税所得金額:所得金額から、さらに「所得控除」を差し引いた金額。この課税所得金額に税率をかけて、所得税や住民税の額が計算されます
  4. 所得税額・住民税額:課税所得金額に税率をかけて計算された額から、さらに「税額控除」を差し引いた最終的な税額。

このように、「所得控除」は、税金がかけられるもとになる「所得」を減らすことで、税負担を軽くする役割を果たします。

具体的な節税額の計算例

例えば、年収500万円の会社員が年間24万円(月2万円)のiDeCo掛金を積み立てた場合、所得税と住民税で年間約5万円程度の節税効果が期待できます(所得税率やその他の控除によって変動します)。

例:課税所得330万円超~695万円以下の場合

  • 所得税率:20%
  • 住民税率:10%
  • 月々の掛金:2万円(年間24万円)
  • 所得税軽減額:24万円 × 20% = 48,000円
  • 住民税軽減額:24万円 × 10% = 24,000円
  • 合計節税額:48,000円 + 24,000円 = 72,000円

このように、毎年の拠出額が全額所得控除の対象となるため、長くiDeCoを続けるほど、合計の節税メリットも大きくなります。

シュミレーションソフトを活用してみよう

しかし、実際の節税額は、ご自身の働き方や配偶者やお子様の年齢によって節税額は異なります。ウエルスアドバイザーでは所得控除を考慮したより正確な節税額をシュミレーションすることができます。

ウエルスアドバイザー画像

iDeCoの他のメリットと注意点

iDeCoの他のメリット

iDeCoには、全額所得控除以外にも、以下の税制優遇があります。

  • 運用益が非課税: 通常、投資で得た利益には約20%の税金がかかりますが、iDeCoで運用して得た利益は非課税となります。これにより、効率的に資産を増やすことができます。
  • 受取時も一定額まで税制優遇: 60歳以降にiDeCoで積み立てた資産を受け取る際も、年金として受け取る場合は「公的年金等控除」、一時金として受け取る場合は「退職所得控除」の対象となり、一定額まで税制優遇が受けられます。

iDeCoの注意点(デメリット)

全額所得控除など大きな税制優遇がある一方で、iDeCoにはいくつかの注意点もあります。

  • 原則60歳まで資産を引き出せない: iDeCoは老後資金形成のための制度であり、途中で解約して引き出すことは原則できません。緊急でお金が必要になっても引き出せないため、十分な預貯金がある状態で始めることが重要です。
  • 運用状況によって資産が増減する: iDeCoで選べる商品は投資信託などが中心であり、元本保証型の商品もありますが、運用実績によっては元本割れする可能性があります。
  • 各種手数料がかかる: 加入時や運用期間中には、国民年金基金連合会や運営管理機関に手数料を支払う必要があります。元本保証型の商品のみで運用する場合、手数料が利益を上回ってしまう可能性もあります。
  • 加入できる条件がある: 加入できる年齢や職業に制限があります。また、課税所得がない場合や非常に少ない場合は、所得控除のメリットを十分に享受できないことがあります。

まとめ

このように、毎年の拠出額が全額所得控除の対象となるため、長くiDeCoを続けるほど、合計の節税メリットも大きくなります。

これらのメリット・デメリットを理解した上で、ご自身のライフプランや資産状況に合わせてiDeCoの活用を検討することが大切です。

新NISAにはない「全額所得控除」を最大限活用するためには、少しでも早く運用を始めることで大きく節税メリットを生かすことができます

コメント

タイトルとURLをコピーしました