人生100年時代といわれる今、定年退職が見えてきたシニア世代や、再雇用で元気に働き続ける方々にとって、「老後のお金をどう守り、育てるか」は避けて通れないテーマです。
そんな中、2026年4月から、私たちの年金づくりを支える「確定拠出年金(DC)」のルールが大きく変わります。
「会社がやってくれている年金(企業型DC)」と「自分で入る年金(iDeCo)」、一体どちらを選べば損をせず、効率よくお金を増やせるのでしょうか?
難しい専門用語をなるべく使わずに、最新の改正ポイントをわかりやすく解説します。
2026年4月、マッチング拠出の「壁」がなくなります

これまで、会社が導入している「企業型DC(企業型確定拠出年金)」を利用している方の多くが、ある「制限」に悩まされてきました。それがマッチング拠出の制限です。
これまでの不満:会社が出す額までしか自分も出せなかった
これまでのルールでは、会社が毎月積み立ててくれる金額(事業主掛金)に対し、自分が上乗せできる金額(マッチング拠出)は、「会社が出す金額を超えてはいけない」という決まりがありました。
たとえば会社が月5,000円しか出してくれない場合、自分も最大5,000円までしか出せませんでした。
せっかく老後のために自分のお金を積み増したくても、会社の拠出額が少ないと、自分の積立額も自動的に制限されてしまっていたのです。
2026年4月からの新ルール:自由度が大幅アップ!
この「会社と同額まで」という制限が2026年4月から撤廃されます。
これにより、会社の拠出額がたとえ数千円と少なくても、全体の枠(現在は月額5.5万円、2026年12月からは6.2万円に拡大予定)の範囲内であれば、自分の判断で上限までたっぷり積み立てることが可能になります。「もっと老後資産を準備したい」という意欲のあるシニア世代にとって、非常に大きな追い風となる改正です。
そもそも「マッチング拠出」を使っている会社はどれくらい?
「自分の会社にそんな制度あったかな?」と思われた方も多いでしょう。
現在、企業型DCを導入している企業は、大企業を中心に全国で増え続けており、加入者数は1,000万人を突破しています。
その中で、従業員が自分でお金を上乗せできる「マッチング拠出」を導入している企業は、全体の約5割から6割といわれています。
もし、あなたのお勤め先で「企業型DC」の案内が来ているなら、まずはマイページや社内規定で「マッチング拠出(本人による上乗せ拠出)が可能か」を確認してみる価値があります。
月2万円を積み立てたらどうなる?「税金」と「社会保険料」のリアルな差
ここで、具体的に「月2万円」を積み立てた場合のシミュレーションを見てみましょう。FP(ファイナンシャルプランナー)の視点から、税金だけでなく「社会保険料」まで踏み込んで解説します。
(シニア世代:年収500万円・所得税率10%・住民税10%と仮定)
パターンA:マッチング拠出で月2万円
節税メリット:年間で48,000円の税金が安くなります(所得税2.4万円+住民税2.4万円)。
社会保険料の軽減:マッチング拠出で支払った分は「給与」として扱われないため、社会保険料の算定基礎となる金額が下がります。これにより、人によっては健康保険料や厚生年金保険料が年間で数万円程度安くなる可能性があります。
手元に残る効果:2万円積み立てても、税金と社会保険料の軽減分を合わせると、実質的な手取りの減少は1.5万円程度に抑えられる場合もあります。
注意点:社会保険料が下がるということは、将来受け取る厚生年金の額もわずかに減る可能性があるという点です。しかし、運用の力でそれ以上の資産を築ける可能性も高いため、バランスが重要です。
パターンB:iDeCoで月2万円
節税メリット:マッチングと同じく年間で48,000円の税金が安くなります。
社会保険料の軽減:ありません。 iDeCoはあくまで「手取り給与の中から支払う」ものなので、社会保険料は変わりません。
手数料:年間約2,052円から(月171円と仮定)。
手元に残る効果:節税メリットは大きいですが、社会保険料の軽減がない分、マッチング拠出に比べると「目先の手取り額」はやや少なくなります。
FPのまとめ:
「今すぐ手取りを増やしたい!」「コストを最小限にしたい!」という方には、社会保険料の軽減効果も期待できるマッチング拠出が非常に有利です。
マッチング拠出とiDeCo、どちらか選ぶならどっち?
今回の改正を受けて、「マッチング拠出が便利になるなら、個人で入るiDeCo(イデコ)はもういらないの?」という疑問が生まれます。
結論から言うと、「マッチング拠出を選んだからといって、iDeCoを強制的に解約しなければならない」という法律はありません。
しかし、現実的には多くの会社で、事務手続きの簡略化のために「マッチング拠出か、iDeCoか、どちらか一つを選んでください」という運用になることが予想されます。
では、どちらを選ぶのが「賢い選択」なのでしょうか?
① 口座管理手数料の違い
マッチング拠出:手数料は会社が負担してくれます。あなたは1円も払う必要がありません。
iDeCo:自分で口座を作るため、毎月数百円の手数料が自己負担となります。
② 商品の選択肢
マッチング拠出:会社が指定した金融機関の商品(数種類から20種類程度)から選びます。
iDeCo:自分で証券会社を選べるため、より手数料が安いものや世界中の株に投資するものなど、自由に選べます。
③ 手続きの手間
マッチング拠出:給与天引きなので放っておくだけ。年末調整も不要です。
iDeCo:自分で銀行口座と紐付け、年末調整や確定申告の手続きを行う必要があります。
④ 積み立てができる年齢
マッチング拠出:多くの場合、会社の定年や再雇用終了(原則65歳など)とともに終了します。
iDeCo:2026年12月の改正で、国民年金に加入していれば70歳未満まで積み立てができるようになります。
比較まとめ表
| 項目 | マッチング拠出(会社) | iDeCo(個人) |
| 毎月の手数料 | 0円(会社負担) | 自己負担(月171円から) |
| 社会保険料への影響 | 下がる可能性がある | 変わらない |
| 将来の公的年金 | わずかに下がる可能性がある | 変わらない |
| 商品の数 | 少ない(会社指定) | 多い(自分で選べる) |
| 手続き | 楽(給与天引き) | 面倒(自分で行う) |
| 終了年齢 | 会社による(多くは65歳) | 70歳未満まで可能 |
シニア世代の「賢い選び方」3つのステップ
今回の改正を踏まえ、シニア世代の皆さんはどう動くべきでしょうか。
ステップ1:コストと手取り重視なら「マッチング拠出」
運用益を減らしたくない、今の手取りを少しでも増やしたいという方は、迷わずマッチング拠出を選びましょう。会社が手数料を払い、社会保険料の軽減効果も期待できる環境を活かすのが、最も合理的な貯蓄術です。
ステップ2:70歳まで働くなら「iDeCo」も視野に
「再雇用で70歳近くまで働く予定がある」という方は、iDeCoの方が長く「節税メリット」を受けられる可能性があります。65歳以降も資産形成を続けたい場合は、iDeCoへの切り替えを検討しましょう。
ステップ3:今のiDeCoをどうするか確認
もし今iDeCoをやっていて、会社の「マッチング拠出」に切り替えたい場合は、iDeCoの拠出をストップし、資産を企業型DCへ移す手続きが必要です。2026年4月が近づいたら、会社の総務担当者に詳細を確認しておきましょう。
最後に:今こそ「自分年金」の見直しを
2026年4月の「マッチング拠出の拡大」は、会社員が自分のお金で老後を守るための、国からの力強いサポートです。
「もうシニアだから遅すぎる」と考える必要はありません。60代からの積み立てでも、月2万円の拠出で年間数万円の税金や社会保険料が浮く可能性があるというのは、運用利回りに換算すると非常に大きなメリットです。
まずは、給与明細や会社の案内をチェックして、ご自身の「居場所」である会社がどのような制度を用意しているかを確認することから始めてみませんか?
分からないことがあれば、会社の担当部署に「2026年の改正で、私の積み立てはどう変わりますか?」と、一言聞いてみるだけでも大きな一歩になります。
老後のお金を「見える化」して、安心で豊かなセカンドライフを手に入れましょう。

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