シニア世代の皆さま、こんにちは。
「最近、持病のせいで体が思うように動かない」「がんの治療で仕事を続けるのが難しい」……そんな不安を抱えながら、65歳の年金受給を心待ちにしている方は多いはずです。
しかし、もしあなたが今、日常生活に支障を感じているなら、65歳を待たずに「障害年金」を受け取れる可能性があります。
障害年金は現役世代だけのものではありません。実は老齢年金よりも金額が高くなるケースが多く、シニアにとって最強のセーフティネットなのです。
ただし、この制度には恐ろしい落とし穴があります。
【実例】61歳で早期退職したAさんの悲劇
Aさんは再就職までの半年間、国民年金保険料を「あとで払えばいいや」と未納にしていました。その矢先に心筋梗塞で倒れ、重い後遺症が残りました。Aさんは障害年金を申請しましたが、結果は「不支給(1円ももらえない)」。
理由は、「初めて病院に行った日の直近1年間に、保険料の未納があったから」。
たった数ヶ月の未納が、生涯で数千万円にもなったはずの年金をゼロにしてしまったのです。
今回は、このような悲劇を避け、皆さんが正当な権利を受け取るための知識をわかりやすく解説します。
障害年金は「老齢年金」よりどれくらいお得か?

まず知っておくべきは、障害年金がいかに手厚いかという点です。
2026年度(令和8年度)の最新予測額を見てみましょう。
障害年金の受給額(2026年度推計)
障害年金には、自営業者などの「基礎年金」と、会社員・公務員の「厚生年金」があります。
| 状態の目安 | 年間の受給額(目安) | 備考 |
| 1級(寝たきりや介助が必要) | 約106万円 + 給料に応じた額(1.25倍) + 加算 | 最も手厚い |
| 2級(日常生活に大きな制限がある) | 約85万円 + 給料に応じた額 + 加算 | 老齢年金の満額と同等以上 |
| 3級(労働に制限がある) | 給料に応じた額(最低保証 約64万円) | 厚生年金加入者のみ |
★ここがポイント
障害年金は「非課税」です。老齢年金のように税金が引かれないため、まるまる手元に残ります。また、配偶者が65歳未満なら、さらに年約24万円の家族手当(加給年金)がプラスされる手厚さです。
ねんきん定期便の「ここ」を見れば一発でわかる!

「自分はいくらもらえる?」「未納はない?」……その答えは、毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」に隠されています。50歳以上の方は、ハガキの「見開き右側(老齢年金の種類と見込み額)」の表をチェックしてください。
「報酬比例部分」をチェック
表の中にある「報酬比例部分」という金額を探してください。これが障害年金の計算の核となります。
- 2級の場合: 定額の約85万円に、この「報酬比例」の額を足したものが年収の目安です。
- 3級の場合: この「報酬比例」の額がそのままもらえます。もし金額が低くても、最低約64万円は保証されます。
「*(アスタリスク)」や空白を探せ
ハガキの裏面にある「月別の加入状況」を確認してください。
ここに「*」印や空白があれば、それは保険料を払っていない「未納期間」です。
冒頭のAさんのように、病院へ行く前の1年間に「*」が1つでもあると、障害年金がもらえないリスクが極めて高くなります。
「未納」があると1円ももらえない!非情なルール
障害年金をもらうには、以下のどちらかのルールを満たす必要があります。
- ルール1(原則): これまで加入した全期間のうち、3分の2以上払っていること。
- ルール2(特例): 病院へ行った日の直近1年間に、未納が1ヶ月もないこと。
シニア世代が特に注意すべきなのは、ルール2のケースです。
シニアが陥る「未納」の恐怖
- 転職時の「空白の1ヶ月」:若い頃、転職時に1ヶ月だけ手続きを忘れて未納になっていた。これが「直近1年」に含まれるとアウトです。
- 早期退職後の放置:50代で退職し、「どうせ65歳から年金だし」と払わずにいた期間に病気(脳梗塞や糖尿病など)になると、1円ももらえません。
「初診日」がすべてを支配する
障害年金において、病名以上に重要なのが「初診日(その病気で初めて医師の診察を受けた日)」です。
シニアを襲う「5年の壁」
シニアの方が申請しようとすると、「実は10年前のあの診察が初診日だった」とされることがあります。
- 記録が消える: 病院の記録(カルテ)は5年で捨ててもよいルールがあります。10年前の記録がないと、初診日が証明できず、申請が止まってしまいます。
- 対策: 古い診察券、お薬手帳、健康診断の結果、家計簿などは、初診日を証明する「お金と同じ価値」を持つ証拠になります。絶対に捨てないでください。
どのような状態で支給される?(具体的な例)
「障害者手帳がないともらえない」というのは大きな誤解です。
- 人工透析を始めた:原則として2級。
- がんで体力が著しく低下:常にだるくて外出できないなら2級。
- 人工関節・人工骨頭を入れた:原則として3級。
- 糖尿病の合併症:目が不自由になったり、腎臓が悪くなったりして生活に支障があれば対象。
- うつ病・認知症:身の回りのことが家族の助けなしにはできない場合、2級の可能性があります。
絶対にやってはいけない「2大失敗」

「繰上げ受給(早めにもらう)」は絶対待った!
「65歳まで待てないから、60歳から老齢年金をもらおう」という判断が、一生の損になるかもしれません。
早めに老齢年金をもらい始めると、その後で病気が悪化しても、障害年金をもらう権利が消えてしまいます。繰り上げる前に、まずは障害年金がもらえないかを確認するのが鉄則です。
未納のまま病院へ行く
「お金がなくて払っていない」時期に、体調を崩して病院へ行く。これが最悪のパターンです。
年金のルールは「病院へ行く前日」に判断されます。病院へ行った後で慌てて未納分を払っても、障害年金の世界では「未納」として扱われ、手遅れになります。
まとめ:あなたの将来を守るために

障害年金は、知っている人だけがその恩恵にあずかれる「申請主義」の制度です。国から「あなたは対象ですよ」と教えてくれることはありません。
シニア世代の皆さんに今日から始めてほしいのは、次の3つのアクションです。
①ねんきん定期便を「宝の地図」として見直す
まずは手元の定期便で、直近1年間に「*」や空白がないか、指差し確認をしてください。もし未納があったとしても、まだ病院に行っていない(初診日がない)のであれば、今から免除申請や納付の相談をすることで、将来の受給資格を守れる可能性があります。
②「年金の繰上げ」という決断を一旦保留する
「生活が苦しいから」と老齢年金の繰上げ請求を急ぐ前に、ご自身の体調を振り返ってみてください。もし持病で不便を感じているなら、障害年金の方が受給額も多く、非課税メリットも大きいはずです。一度繰上げてしまうと、後から「やっぱり障害年金にすればよかった」と思っても、ルール上取り消しはできません。
③過去の受診記録を「財産」として整理する
「昔のことだから忘れた」で済ませず、古いお薬手帳や診察券をひとまとめにしておきましょう。病院に記録がなくても、あなたの手元にあるメモが、障害年金という大きな支えを引き寄せる鍵になります。
障害年金は、これまで真面目に働いて保険料を納めてきたあなたに与えられた正当な権利です。「自分には関係ない」と決めつけず、困ったときは年金事務所や、障害年金に詳しい社会保険労務士(社労士)といったプロに相談してください。
あなたの権利をしっかり守って、安心した老後を迎えましょう。


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